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うたかた

記事にしたいことは色々あるのですが。
先日の舞踏会がとても心に残るものだったので、更新にあまり気が向きません。
とはいってもそんなことを言っていたらブログの更新ができなくなってしまうので(双子座流星群のことは書きましたが)、そろそろ夢から覚めなければいけません。

* * * * * * * * * * * * * * *

悲劇的に。
壊滅的なまでにうちのめされ、
蹂躙された王都は。
奇跡のように、よみがえりました。
もちろん、時を友としましたが。

でも《あの方》のいない宮殿に、社交界に、
わたくしは喜びを感じることができません。
知った顔も少なくなりましたしね。
こころの奥底では、鄙びた地方で隠遁生活をおくろうかとも思うのですが、在りし日の華やいだ《あの方》の面影をもとめて、王都をはなれられないでいるのです。

サロンにでて。
やはり物足りなく、早々に退出することもしばしば。

気がつくと、足は同じ所に向かっています。
小さな、名もないみずうみ。
風はないのに、つめたい大気がほおをさします。
樹の幹がしろくひかって。
月明かりのせいですね。

しろい月。

あのおそろしい夜には、そらに赤い目があったとか。
その下を。
お馬車はすすんでいったのですね。

なんとおいたわしいことでしょう、
おそろしいことでしょう。
そして希望の光り、かそけくも輝かしい一筋でありましたのに。

風かしら。
水面に、輪が。
月影にさそわれて、魚でも顔をだしたのでしょうか。

葉ずれの音もきこえぬそのなかで、わたくしは水面に目を奪われていました。

その時だったのです。
聞こえてきたのは。

それは《あの方》のお声。
うた だったのかもしれません。

社交界の華。
典雅の王。
並ぶものなき、輝ける御方。

果ての地にあこがれ、こがれていた御方。
人々の恋と、賞賛のまと。
なのに誰よりも独りだった御方。

ああ
お願いです。
もう歌わないで。
語らないで。
こんなにも、心がかきたてられるから。
くるしいから。

なぜわたくしの時はとまっていないのでしょう。
《あの方》はもういないのに。
お願いです、もう現れないで。

面影をもとめる、わたくしがいけないのでしょう。
くるしいのに。
何かがえぐられるように、もぎ取られるように、苦しいのに。
やはり《あなた》を想わずにはいられないのです。

どんなにねがっても、
もどらない
しあわせな日々。
過ぎ去りつづける、時のながれよ。

気がつくと、しろい樹にもたれかかっていました。
しっとりとした感触、ひんやりとしたやさしげな水滴。
いつのまにか雨がふったのですね。
流せない涙の代わりのように。

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